■コイムスビ-神様と一緒-
―――響5:お日様護法と神無月 前編


 はいけい、あるじさま。


 らいげつは「かんなづき」っていう、とくべつな月らしくて、ととさまは神様のかいぎに出席するんだって、おしゃれをしていました。
 かいぎって、どんなものなんですかって聞いたら、
「人々の良縁をムスビ、たくさんの幸魂が満ちるよう主様にお頼み申し上げる、とっても大事な会議なのだ」
 と言ってました!

 わたし、それを聞いた時、なんて素敵なことなんだろうって……涙が出てしまいました!
 だって……あるじさまって恋のキューピットってことですよね!
 恋のご縁を結んであげるなんて、なんて素敵で、幸せな力なんでしょう!
 そして、そんな素敵なことをお仕事にするわたしたちは、なんて幸せなんでしょーかっ!
 わたし、わたし……っ、あるじさまの護法に生まれて、本当に良かったと思います!
 こんなに誇らしい事はありませんっ!



 あまりにも嬉しかったのではしゃいでいたら、ととさまが、
「響は生粋の護法なのだな」
 と、何故か困ったようなお顔で仰いました。
 私は、ととさまに、
「あるじさまの為に働いて、みんなを幸せにしたいのです!」
 と言ったら、ととさまはすごくすごく嬉しそうでいて……その分、寂しそうなお顔になって、響をぎゅーっと抱きしめてくれました。
 ちょっと苦しかったのですが、ととさまの抱っこは何故だか……すごく寂しげで。
 わたしも、ととさまの背をぎゅーっと力いっぱい抱き返しました。



 あるじさま、響は思うのですが……。
 ととさまの親バカは、親バカだけじゃない気がするのです。

 だってととさまは、いつもはとっても強くて、手なんか抜かない厳しさも持っていて、弱点なんか無い、すっごい神様なのです。
 でも、早く立派になりたいって言うと、嬉しくって、寂しいお顔の、ちょっとだけ弱い、響のととさまになってしまいます。

 響は早くあるじさまの為に働いて、みんなを幸せに出来たらいいなって思います。
 でも、それはととさまにとって苦しい事で。
 その気持ちをつたえると、ととさまは悲しくなってしまうのです。



 あるじさま、響はどうしたらいいんでしょうか……。
 かかさまに相談したら、すごくすごく優しいお顔で、
「響は響のなりたいものになるために頑張りなさい」
 としか言ってくれませんでした。

 それじゃあ駄目なのです……。
 響は、ととさまとかかさまに喜んで欲しくて……。
 その上で立派な護法にならなくちゃ……いやなのです!



 うう、あるじさま、ごめんなさい………。今日のわたし、わがままですね……。
 あ、あしたはきっと、笑顔で元気な報告ができると思うので、今日は……もうおやすみします。
 
 長月、子の刻。
 あるじさま大好きな、響より。
 けいぐっ!
back next