■コイムスビ-神様と一緒-
―――空の目:2




 重量超過の列車が走る。
 苦しみも憎しみも希望も憧れも諦観も乗せて。
 列車の中は酷い匂い。跳ね回る虫は蚤か虱か。
 誰一人文句は言わない。それよりも大事な事があるから。


 重量超過の列車が走る。
 勝利も栄光も財産も蔑みも同情も乗せて。
 列車の中はとても快適。吹く風はすがすがしい緑の香りか。
 焼く事も殺す事も無く奪った場所だから。人以外、とてもとても綺麗だった。





「………………」

 焼け焦げた町。
 墓標の様なドーム。
 そこには死すら存在しない。無数の影が広がっていた。
 けれど、人は生きるため、焼け野原にさえも建物を建てる。
 少しずつ元に戻り始めた町。再生の町。

「………………」

 獣は、その目を細める。
 生きようと、育てようと足掻く人々を見て、目を細める。
 家よりもなお大きい、ドームよりもなお大きい。
 巨大な獣が座しているのに、人々は気付かない。
 だが、それでいいのだと獣は思う。救えなかった存在を人々は欲しない。
 彼らに必要なのは、神では無い。
 お腹いっぱいのご飯。そして、明日への希望。

「………………」

 獣はゆっくりと踵を返す。
 静寂の山へと歩みを進める。
 敗者にも、出来ることがあるはずだから―――。





「おかあちゃん! これ道に落ちてたんだよ!」
「なんだい………え、これ………」
「野菜だよ、新鮮な野菜だ! イモもたくさんあるんだ!」
「ほ、ほんとに道におちてたのかい!?」
「ほんとだってば――――――」


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