●門松


「年神様とはどのような方なのでしょうか? お座布団もご用意したほうが良いですよね?」
「必要ありませんよ。年神様は実体の無い神様ですから」
「は、お体が無いのですか?」
「はい。洞窟の入り口に門松を飾ったでしょう? 年神様は門松を拠り代にして家に降りるのです」
「ふわー、竹がお体になるのですか。でも、それではお餅を食べられませんよ?」
「ふふ、年神様は形あるものを食べるのではなく、込められた想いを食べるのです」
「おもい………ですか?」
「今年も一年、田畑の実りが万全でありますように。
 どうか豊穣を授けてください……と祈り、年神様を敬う気持ちを鏡餅に込めれば、年神様はその気持ちを喜んでく
ださるのですよ」
「そうですか………欲の無い方なのですね……。
 とてもではありませんが、お餅を食べられない苦痛には耐えられません!」
「響は食いしん坊ですね、もう」
「いっぱい食べないと大きくなれないのですよ!」
「はいはい。くすくす」









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