春眠暁を覚えず


「むにゃ……すぴすぴ……」
「……ねーさん?
わ、ねーさんねちゃってますよ!」
「こら、凛。
起きたばかりだろうが。
さっさと目を覚ましたまえ、片づけが始まらん」
「むにゃ……。
しゅんみんあかつきをおぼえず、っていうじゃない……。
はるなんだからすきなだけねかせてよー……」
「やれやれ……。
孟浩然には悪いが、ねぼすけがコレを詠うと
ずぼらの言い訳にしか聞こえんな」
「あう?」
「―――春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知んぬ多少ぞ―――
春は夜明けに気付かぬほどに深く眠ってしまう。
目覚めればあちらこちらで鳥が鳴いている。
夜半の嵐のおかげで花もたくさん散ってしまったらしい。
さて、桜。姉の吐いた言葉にこの歌をどう取る?」
「えと……おはながたくさんふきちらされて
しまうほどのあらしがあっても…
それにきがつかないくらい
いっぱいねむっちゃったんですよね……?
くすくす……なんだか……」
「(ぴくっ)」
「ククク……。
まあ普段がずぼらな輩が吐いてよい言葉ではなかろうな。
ああ、自称乙女が聞いて呆れる。
孟先生に同情せざるを得ない」
「(がばっ!)
ちょ、ちょっとーー!ひどいよー!
しょうらいまちがいなく
”こくみんてきアイドル”にすいせんされちゃうような
おとめちっくりんちゃんにたいして、ひどいいいようじゃないー!
そんなにずぼらじゃないし、
わたしはせんさいなおんなのこなんですー!」
「ああ、繊細ね。
地獄耳の間違いのような気もするが」
「むうー……。
もーいいもん。めがさめちゃった。
で、なにをやるって?」
「にわのおかたづけですよ」
「え?にわがどうかしたの?」
「…………」「…………」
「……えと……。
ねーさん……きのうのよる、すごいあらしがあって……」
「ほえ?あらし?」
「何も言うまい……」



家政夫と一緒編。
休む時に十分休める技能はある意味
とても大切なものだけど。
がんばれ孟先生。