
理想の対価
「あーちゃー・・・ねこさんだいじょうぶ?」
「ねこさん・・・うごきませんよ・・・」
「・・・・・。
車にはねられたのだろう。
その後も何回か踏まれたようだ。
・・・・・・残念ながら、この子はもう死んでいる」
「しんでるの・・・?」
「そうだ。
日の光を見ることも
友人と話すことも
幸せを感じることも・・・。
もう無い。
この子の未来は・・・尽きたのだ」
「・・・・っ・・・・。
そ、そんなのってないよ・・・。
このだってもっといっぱいいきて
しあわせになりたかったはずだよ・・・!
こんなりふじんってないよ・・・
ゆるせないよ・・・」
「ねこさん・・・っ。」
(そうだ。
こうして零れ落ちてゆく命の理不尽を許せなくて。
私は力を欲した。
この世界のすべての理不尽から・・・誰かを守るために。
だが・・・)
「・・・。
凛、桜。
すべての命を理不尽から守ることは・・・出来ない。
砕けた命を巻き戻すことも出来ない。
”人間”は自分と。自分たちの周りにある一握りのものしか
守ることは出来ないのだ」
『・・・・・っ』
「・・・。
だからこそ。”人間”は・・・君たちは。
その手の届く大切な人を・・・己が見る未来を守るために。
全力をもって生きていかなければならない。
後悔をしないようにな。
・・・だから今は・・・。
この子を弔ってやろう。
今度生まれるときには幸せになれるように。
全力を持って、祈ろう」
「ぐすっ・・・うん。いっぱい祈るよ・・・。」
「はい・・・。ねこさん、こんどはしあわせになれますように・・・
いまわたしができるきもちいっぱい、いのります・・・」
「ああ。それがいい」