夢の果て

―――自由な風の吹く果てしない草原で
青い風に吹かれ
何処までも逃げてゆく夕日を追いかけて
ただただ、走り続ける。
隣には、少年のように笑う英雄と
偉大な名前を持つ馬二頭に、御者の王。
おばあちゃんから聞いた、偉大な伝説の数々を歌うように話す私。
苦笑しながら聞く二人の英雄。
最後はいつもこう、訊ねる。
「私も貴方たちのような偉大な英雄になれますか?」
「英雄になれば、貴方たちの隣にいてもいいですか?」―――と。
子供の頃から、ずっとずっと、憧れてきた。
彼らの物語を何度おばあちゃんに歌ってもらったか判らないし
いろんな本もたくさん読んだ。
そらで歌えるほど、頭の中にその物語は息づいている。
けれど―――。
その中に、私の名前はない。
彼らの隣に並ぶことは、出来ない。
だから、追いかけた。
夢の中で問いかけた。貴方たちの友達になりたいと。
―――そうして、それが夢になった。
いつもは、そこで終わる夢。
けれど、ここは常しえの国。
燃える様な、大きな大きな夕日が昇る丘。
沈まない夕日の国。
戦車の縁に腰掛けて、英雄は大笑いして
言った。
「アホみてえに傷ついて。
可愛い顔ボロボロにしてよ。
それでも、テメエの夢を守った。
そんな馬鹿、放っておけねえだろ?
だから断る理由なんかねえよ。
大体俺は馬鹿のほうが好きなのさ。
英雄?………ククッ。んなもんに資格なんかねえよ。
―――きっとな。オマエみたいな馬鹿の事を……。
『英雄』と、人は呼ぶんだぜ」
呆れるほどに強く、輝く赤い夕日は
溢れる涙を、隠してくれるだろうか。
あの日、歩き始めて、目指したゴールラインは
とてもとても、遠くて。
ここまで来る間に、言いたかったたくさんの言葉は擦り切れてしまった。
だから、もう、私の中に残っているのは
ただ一言だけ。
「ただいま。クー・フーリン」
「おうよ」
「お帰り、我が友」
END