ただ一人の為に


アインツベルンの城で共闘戦線の約束をした
3人は一路教会へと向かう。

「よぉ嬢ちゃん」
「? 何よランサー」
「坊主とはどこまでいってんだよ?」
「ぶーーーーーーーーーーー!
なっ……ばっ……だからそんなんじゃないっていってんでしょっっ!!」
「ハァ?愛妻弁当作ってピクニックたぁ
連れ合いのやることじゃねえのか?」
「えっ!?
あ、ああああああんたどこまでしってるのよぅ!」
「どこまでもクソも……ははぁん…。
さすがは嬢ちゃんだ。見られて困る事は経験済みか。
オレが見込んだだけはある」
「っ……
ガーーーーー!!!
ちょっと、士郎も見てるだけじゃなくて何か言いなさいよっ!」
「いや、ランサーとはそういう約束だからな。
触らぬ神に祟り無しともいうし……」
「何か言ったでしょ今!?」
「(ぷるぷる)」
「ククク……」
「だいたいなんでそんなこと聞くわけ?
どうせ敵になるのよ?相手のことなんて
深く知らないほうが良いに決まってる」
「手元が鈍るってか?フン。
敵となれば殺すのに躊躇いなどないさ」
「む……どちらにしたって理由にはなってないわ」
「……たく、野暮な嬢ちゃんだこと。
オマエに惚れたからに決まってんだろ?」
「……え?」(ボッ)
「ク……クハハハハハ!
そういうとこだよ!ドライで割り切りもいいし腕も立つ。
何より将来有望な美人だ。
だというのに色恋沙汰にはトンと奥手。
なんとも可愛いじゃねえか」
「ばっ……冗談は止めてよね!」
「おいおい、狙った女の前でそんな冗談言うかよ。
……っと。だんなが睨んでやがるな」
「だれが旦那よっ!」
「おお、こええこええ。
クク……。坊主と下らん約束しちまったかね。
……ま、たまには一人の女に操を立てるってのも
味だと思うだろ?」
「セクハラ英霊!ぶっとばすわよっ!」
「おいランサー」
「ククク……坊主睨むな睨むな。
からかってもいい約束だったろ?
それに一人の女ってのは……嬢ちゃんじゃねえさ」
「?」
「ま、それこそそのうち敵に回る嬢ちゃんは……
しらねえでいいこった」
「むー……」
「ククク……」


ランサー編その20。
奇妙な一行。
昨日の敵は今日の友。
明日の無事をも知れぬ世界で生きてきたランサーにとって
一時一時の出会いはとても大切なもの。
だから、明日敵に回るかもしれない
二人であろうとも。
友好を暖めるのに躊躇などしない。