犬の散歩

「さあわんちゃん、お散歩のじかんですよ」
「……嬢ちゃん」
「なんでしょうか」
「わんちゃんって呼ぶな」
「犬でしょう?アルスターの猛犬」
「う」
「それともあなたは貴方を表す名前の概念を否定すると?」
「嬢ちゃんのいってる意味合いはそういうんじゃねえだろうがよ!」
「いえそういう意味合いでいいましたけど」
「……………。
……聖職者のクセに底意地がわりいよな、嬢ちゃん」
「だって誰もかまってくれませんから。今の私は貴方たち以外にはあって無いような存在です」
「……………。
あーーー……。ったくよ……。
判った、散歩でもデートでもしてやっからそんな顔すんな。
だからとりあえずコレはずせ」
「何故ですか?犬の散歩には首輪が必要でしょう?」
「―――テメエ、絶対遊んでんだろ」
「はい。それがなにか?」
「………もういい。いくぞ」
「待ちなさいわんちゃん」
「わんちゃんじゃねえっ!
なんだよ?」
「飼い主より先を行く狗なんてつれて歩きたくありません。
飼い主としての私の尊厳が疑われます」
「ガーーーーーーーーーーーーー!」