初めての友達

『こらーーーー!だせーーーー!』

流れ星は僕の中で外に出せと荒れ狂っている。
だけど出てしまったらいつか君は落ちて死んでしまうだろう?
だから悪いけど僕の心臓で君を縛ろう。
僕の命を分けてあげる。

―――それが僕が君とする契約だ。


心臓と一つになった流れ星は僕の導きにしたがって
胸からせり出してきた。
僕の心臓と一緒に。
心臓を核に燃える炎の形になって現れた流れ星は
怒ったような表情で僕を睨みつける。

「・・・馬鹿な奴だな。これで君は悪魔と契約しちまったわけだぜ?」
「そのかわり君は死ななかった。
それでいいじゃないか」

僕はにっこりと笑って答える。・・・あ、名前を知らないや。

「君の名前はなんていうんだい?」
「はぁー・・・。
カルシファー。悪魔カルシファー。
それが今日からおいらの名前さ。
・・・ちくしょう。君とは離れられないみたいだな。
まったくどんな契約なのか知らないけどひどいもんだよ・・・。
自由にしてくれるなんて嘘っぱちじゃないか!」
「僕は君と契約したせいで今日から悪い魔法使いだからね。
もうサリマン先生のところにも帰れない。
だから君と二人っきりってわけさ。
だから今日から君が僕の唯一の友達。
ま、仲良くやろうよ」
「そいつは自業自得だし友達なんてまっぴら御免さ!インチキ魔法使い!
・・・そういや名前を聞いてなかったな。
・・・相棒」

カルシファーは半眼でそう尋ねてくる。
いかにも文句ありげだけどちいさなその姿にはちっとも悪魔らしい迫力が無い。
僕は苦笑しながらこう応えた。

「ハウル。
魔法使い・・・ハウルさ」



魔法使いハウルと火の悪魔その5。
命を共有することで堕ちて死ぬという
定めからカルシファーを開放したハウル。
けれどもそれは
力を使うたびに魔道へと堕ちていくという
巨大なリスクを背負うことと同義。
そのことに二人が気付くのはまだ少しの時間が必要となる―――。




というわけで魔法使いハウルと火の悪魔最終話。
ハウルにとってカルシファーってなんだろうと思うんだけど
単なる従属関係ってわけでもないんだよね・・・。
なんとなく新しい居場所、みたいなもんじゃないかと
思うんだよな・・・。
嫌だ嫌だというカルシファーもその心のどこかで
この危なっかしい魔法使いを放っておけない。
利用だけしているようでハウルも彼といることが
どれだけ救いになっているんだろうか。

彼は守るものがはじめて出来た、とソフィーに言っていたけど
実のところ既にいろんなものをその腕の中で
守っているんだよね。
カルシファーやマルクル。

だからあの言葉は愛の告白もあるんだろうけど
むしろ本心の多くを語ろうとしない彼が
いろんなものに対してはっきりしていこう。
前向きに接していこうという人間的な成長と
愛する人を得られたという大人へのステップ、みたいなもんじゃないかと
思ってます。
(なんだかんだ子供だからねぇ・・・w)