貫けぬモノ無し


――人は空を飛べぬと思うか?――
羽のない生き物である人間にとってそれは空想であった。
だが人は魔術で、そして科学で。
それを成してきた。
人は空想を具現化させることすら可能なのだ。
ならば。
人の理想を骨子として存在し人外の理を振るう
サーヴァントであろうとも。
この拳で砕けぬ訳はあるまい。


月光の下。空を舞う黒い影。
魔術師狩り、バゼット・フラガ・マクレミッツ。その人である。

「・・・っ!?」
キャスターは一流の魔術師ではあるが一流の戦士ではなかった。
ランサーを狙う大魔法をすぐさまバゼットに切り替えれば
間に合ったであろうその一瞬は迷いに取って代わられた。

―――それが全てだった。

ザスッ

「・・・っはっ・・・!」

キャスターの魔術的防御を打ち貫き、バゼットの拳がその肺腑をえぐる。
―――同時に。
彼女の魔術刻印が輝き対象の構成因子を
『停止』させるべくルーンを刻み込む。
そう、幾百と。


Ein Konzept stoppt.この理に触れる者
Mein Glaube kann zu niemandem gestoppt werden・・・!尽く停止せよ・・・!

キャスターの体を構成する魔力の流れが停止し、凍結されてゆく。
それは霊体における死をもたらすもの。
受肉した英雄である彼らにとって、魔力の枯渇は死を意味する。

―――だが。
バゼットの魔術により凍結したそれは、サーヴァント構成の術式では・・・無かった。

「なっ・・・に!」

ひとつの術式の崩壊に伴い、もうひとつの編まれた術式が起動する。

―――キャスターの体が炸裂した。


ランサー主従VSキャスター。対キャスター編最終章。
裏をかきなお裏をかく攻防。その結末は・・・?