黒い男


ギイイイィィ・・・

「ほう・・・これは懐かしい客だな・・・。」
「このような僻地で貴様ほどの代行者が
穀を潰しているとはな。コトミネ。
なぜ代行者を辞めた」
「これは手厳しい・・・。
別段穀を潰しているわけではない。
単に戦えなくなった。それだけだ。」
「・・・。前回の聖杯戦争に参加した、という話は
本当だったのか・・・。
そしてもう戦えない傷を負ったとも・・・。
妻子もあり、代行者として将来を期待されていた
貴様が聖杯に何を求めたというのだ・・・!」
「・・・・・・。
マクレミッツ。
君はこの地へ私を罵倒しに来たのかね?」
「・・・ッ・・・。
・・私とて世間話をしに来たわけではないさ。
ただ・・・歯がゆかっただけだ。
貴様ほどの使い手が・・・他の魔術師に負けたという事がな」
「サーヴァントの召還よりも先に
私の顔を見に来てくれたことはありがたいことだがな。
マクレミッツ。ひとつ忠告しておこう。

―――ここはもう、戦場だ」

「・・・!
・・・ああ。
どうかしていた。腑抜けに活を入れるつもりだったが・・・
逆に入れられるとはな。
礼を言う、コトミネ」
「(苦笑して)
礼には及ばんよ。
君は昔から甘いところがある。
協会の支援を受けてここに来たようだが・・・。
戦場において信じられるのは己のみだ。
後ろには気をつけることだな」
「耳が痛いな・・・。
神父らしい説教変わっていないようで安心したよ、コトミネ。
せいぜい気をつけさせてもらう」
「・・・フ。
私も懐かしい顔にあえてらしくないようだ。
監督者たるもの中立であらねば、な。
・・・良き戦いを。マクレミッツ」
「・・・・ああ。
正式なマスターとして
今度は貴様の前に姿を現すとするよ」


教会にて。
数年ぶりの再会。
お互いの力量を認め合い
時に火花を散らし時に共闘した仲だからこそ
競い合う場所でもう二度と会うことのない
奴の姿が・・・寂しかった。
戦いと闇の中でしか己の居場所を知らない
彼女にとって対等に渡り合えた彼が
そうでなくなる事は大きな欠落に違いない。