Interlude


「随分と甘いことだな。言峰」

暗がりの中から声がする。
姿は見せずとも圧倒的な存在感を放つその男。

「・・・殺しておけ・・・か。
あの男に任せたのだ。十中八九死にはせんだろうな。
―――だが。
早くて二週。遅くて三週。この戦いがそこまで長引くことはあるまい。
ならば。どんな魔法を使ったところで。
アレはそれまでには直らんよ」
「クク・・・。まあ雑種が一匹二匹増えたところで
何が変わるわけでもないがな・・・。
戯れもまた、よかろう」

話に飽きたのか。
英雄王は礼拝堂から姿を消す。

甘い事。
確かに。だがこれは娯楽。快楽である。
ならば不確定要素はある程度はあったほうが
愉しみは増えるというもの。

―――その、ハズである―――。

「・・・フン」

言峰は、亡き妻の姿を―――
十数年ぶりに思い出した。

『そうだ。私は殺したかったはずだ。
それが―――私にとって最大の快楽ではなかったか。
ならば。この手で止めを刺さなかったのは・・・』

―――――。
黒い神父は頭を振った。

「詮無き事。
もししくじるとするならば・・・。
キリツグ。


あの日お前に破滅を止められた夢を砕かれた時から・・・。
もうこの道は………
断たれたものなのかも知れんな」


幕間。接続章。
お前は全てを壊した。
道を貫けぬ脆弱な者がただ気まぐれに。この夢を破壊した。
そして。かりそめながらも確かにその男は手にしたのだ。
この手にはどうしても掴む事の出来なかった・・・
幸せというものを。

憎しみなのか渇望なのか。
殺意なのか羨望なのか。
未だにその感情はつかめない。
そうしてその答えが出ないまま。
あの男は消えた。
だから。今もこの身の内には。
永遠に出ない答えが残されている―――。