教会への坂道。

「ランサー。・・・先日の話、覚えているか?」
「あ?どれのことだ?」
「願いがどうのという話だ」
「あー。クックッ。女らしくなりたいって願いだったか?」
「ーーーっっ!違う!!
減らず口を叩けないように令呪を使おうか・・・!?」
「ククク・・・いやいや、勘弁だ。」

そんなランサーの顔を見て・・・表情を緩めるバゼット。
ついと、夜空を見上げる。

「・・・ふふ。
正直。この話をもらった時・・・。
そんな奇跡が起こるなど・・・信じられなかったんだ」
「・・・オレと会えたことが・・・か?」
「ああ。あなたは私の生涯の目標で・・・
もし。夕日の向こうに私がたどり着き、そこで出会えたら。
生涯をかけて培った力と技であなたに挑み、
そして・・・」
「・・・?」
「あ・・・なんでもない」
「(ガクッ)おいおいおい。
気持ち悪いだろうがよ。ちゃんと言え」
「・・・ん。その・・・。
友人になれたらいい。
そう・・・思ったんだ。
肩を並べてあなたとアルスターの原を駆け巡る。
きっと・・・爽快で。とてもとても・・・気持ちが良い。
そう・・・夢見ていたんだ」
「―――――。」
「だが・・・こんなに早く叶ってしまった。
貴方と共に戦えた。言葉も交わせた。認めてもらえた。
だから、もう・・・私の夢は、願いは叶ってしまった。」
「――――。
フン。」

ランサーの大きな手がバゼットの頭をクシャリとなでる。

「・・・?」
「人生終わるにゃオマエはまだ若すぎだ馬鹿。
それにまだ叶えていないだろうが。」
「?」
「オレと共にアルスターの野を駆け巡るんだろが。
そうだな・・・聖杯手に入れたらよ。
ロイグも呼んで戦車で駆け回ろうや。
ちったあましな使い方だろう?」
「・・・プッ・・・ハハハハ!
ああ、そうだな!たしかにましな使い方だよランサー!」
「だろうが。ククク・・・!」
「・・・それに貴方とも手合わせをしたい。
教えてほしい事もたくさんあるんだ。ランサー」
「フン。甘い教師じゃねえぜ?俺はよ」
「望むところだ」
「―――ヘッ。
オマエはその方がやっぱ良い女だぜ。
・・・っと」

教会の前の一本道。

「・・・・・・いけすかねぇ空気だな・・・。
やっぱ付いて行くか?」
「子供じゃないんだ。
用件を聞いたら帰ってくる。
・・・では行って来るよ。ランサー」
「ああ。行って来な。マスター」


バゼット編13話。
教会の前にて。別離。